「佐野赤絵」の継承者の一人であった亀田山月が六十一才時の作品です。内も外も「吹屋弁柄」の赤色で細描され、「佐野赤絵」らしい三賢人、山水図、小紋には緻密な筆遣いとその熟達さが見えます。「吹屋弁柄」の赤色が幾分濃くなっていて、明治後期にあった九谷焼全般の改質が影響して「吹屋弁柄」の使い方にも変化があったようにみえます
サイズ;口径 約6.6㎝ 高さ 約10.5㎝(蓋を含む)
三賢人図や百老図、竹林七賢人図などは師であった齊田伊三郎が好んだ図案で、この人物図に見られる顔の描き方には山月独特のものが出ています
碗の内と外、蓋の内側、それぞれに中国風の山水図が細描されている一方で、大樹の描き方に日本画のような緻密で切れの良い筆運びも感じられます。山月の「吹屋弁柄」の使い方には濃淡を感じさせる技法が見て取られます
銘は「九谷/山月/六十一才作」と書き入れられ、山月が晩年に入りかけ、作品全体に熟達したところが見られます。高台周りの蕉葉文(芭蕉の葉を文様化した)にも熟達した筆遣いが見られます