“おめでたい”を器体に表現した、珍しい小型の手炙りです。側面には五つの吉祥文から型どった窓に人物画、牡丹などの花鳥、竹と雀などを赤絵金彩と黒色を中心に彩色し、窓の周りを金襴手の地で埋めています。「佐野赤絵」を参考にした画風のように感じます
サイズ;径 約10.4㎝ 高さ 約10.1㎝
沢田南久;沢田南久は、安政3年(1856)、12才から陶法を学び続け、さらに諸大家の画図、絵手本を収集して独学し、3年の後に陶画業として独立しました。当時盛んに制作されていた「庄三風」だけでなく、明治17(1884)年にドクトル・ワグネルに築窯法、和絵具の改良について指導を受けました。和絵の具と洋絵の具を使い、緑、紫、黄を好んで用い、細密に描かれた花鳥は寺井九谷の基礎となるほどであったいわれます
他の窓よりも大きな窓には、斉田伊三郎が広めたといわれる、中国風の人物画が描かれています。明治初期には人物画が絵手本などで能美地方や金沢に拡がっていたとみられ、この人物画もそうした中から参考にしたと思われます
この文様が何であるか不明ですが、「吹屋弁柄」でなければ描けないほど、羽毛を連想させる繊細な文様です