墨を摺る硯に水を注ぐための“水滴”です。胴と蓋には秋の花草が咲き誇り、ススキが風になびく様子を精緻に描かれ、鳳凰の注ぎ口と竜の取っ手が細密に彫られています。当時、意匠をこらした金属製(鋳型で造り易かった)の水滴が造られましたが、竜山は陶磁器でしかも真白な素地の上に赤絵細描して制作しました
サイズ 幅(最大) 約7cm 高さ(最大) 約5.3cm
真白な余白を残して、鳳凰と竜を濃い弁柄の赤色と秋の草花をやや薄い弁柄の赤色で描いて「紅白」が演出されています。すすきの穂がたなびく姿が細描されています。金彩は部分的にとどめ、小さな器に「紅白」を表現しているようです
竜山は37歳になって、なおも、陶芸に研究心が旺盛であったといわれ、明治31年に小松八幡村にあった松原新助窯で製陶の指導を受けてこの水滴の制作にも経験を活かしたと考えられ、この成形にも巧みさが小さな器に凝縮していています
注ぎ口には鳳凰の頭部から頸の部分が、把手には龍の頭から尾までが、それぞれ細かい彫りがはいっています。注ぎ口の根元が金継ぎされていても、なおも造形の美しさは保たれています