「銘款(めいかん)」とは陶磁器に見られる製作者、製作窯元などの銘のことを意味し、通常、銘と呼ばれます。それは陶磁器の発展に伴って生まれたといわれ、中国では宋元の時代にその原型が生まれ、明代に「大明万暦」「大清乾隆」の銘の形式が完結しました。日本では陶器に始まり、仁清の堂々たる“銘印”が生まれ、伊万里で中国磁器の銘に倣って「大明成化年製」や「福」が器に書き入れられました。
一方、古九谷が明代磁器の銘に倣って多くは「福」を書き入れましたが、江戸末期の再興九谷が製作窯元、産地などの名が高台内に書き入れられ、さらに、明治になると、「大日本」のような国名や「九谷」「加賀」のような産地名、それらに製作者名(屋号)を加えた銘が書き入れられるようになりました。伊万里の銘と、再興九谷以降の銘との違いはそれぞれの生産形態の違いから生まれたと考えられます。
1.明代磁器の銘と古九谷の銘
明代に官窯での銘が初めて使われ、それに倣った伊万里や古九谷では主に角「福」が高台の中に書き入れられました (解説に続く)
2.再興九谷の銘
江戸時代の末期に加賀藩や大聖寺藩で興った諸窯は、それぞれ異なる目的や背景から築かれたので、窯元特有の製品が造られ、したがって、銘にもそれぞれに特色の銘が見られます (解説に続く)
3.明治九谷の銘
明治九谷の銘は、すでに再興九谷で見られた角「福」、産地名、窯元名、陶画工名などに加えて、新たに、陶画工名が屋号という形を変え、あるいは、国号、堂号などが加わりました (解説に続く)