吹屋弁柄の九谷焼 橋田与三郎 赤絵金彩三窓絵蓋付茶碗

ほぼ「吹屋弁柄」の一色で絵付され、ところどころ金彩が施されています。この蓋付茶碗には、一つの窓絵と蓋に描かれた「富士飛鶴松図」を主題として、他の二つの窓にも蜻蛉と草花、雁の群れの図案が描かれています。これらの図案から師であり義父である齊田伊三郎(道開)が74歳で、与三郎自身が75才でそれぞれ亡くなりましたが、晩年61歳になった自分の慶事(長寿)を記念して制作したと考えられます

サイズ;口径 約7㎝ 高さ 約8.6㎝(蓋を含む)

茶碗の側面には三つの窓絵が描かれ、比較的珍しい構図で、赤絵の細描画の際立つ作品です。ささやかな栄達と幸福、長寿などを意味するような様々な図案を用いて表現しています。

一つの窓は自分の長寿を感謝して、富士山と羽ばたく二羽の鶴、松の木の美しい風景を道開の創案した赤絵金彩で濃密に描いています

二つ目は伸びやかに成長した初秋の草花と羽を広げた蜻蛉(トンボ)です。この図からは、蜻蛉がもつ季節感(初秋)とともに名もない草花が成長している姿を今の自分に重ねていて、制作者の心情が映し出されているようです

三つ目は晩秋の情景としてよく用いられた「鴈の群れ図」です。雁は晩秋から初冬にかけ群れを成して飛来し、早春にまた北に帰るといわれ、そのとき鳴き渡る声が哀調を帯びるため、晩年を迎えた者の心情を表わすものとしてよく絵画に描かれたように、この作品でも同じような心情が伝わってきます

松の枝の合間から鶴・松・富士という縁起ものをのぞかせ、左に赤絵金彩で小紋をはさみ、より絢爛に濃密に飾っています

碗の高台内には「九谷/与三郎」、共箱の蓋の表には「道開二代/与三郎」と添え書きされ、さらに、蓋の裏には二代 橋田与三郎の朱印「橋田遊松」を押して“この作品が“初代 与三郎の作”であること”を証しています。貴重な作品と共箱であるといえます

道開二代;ある資料には“二代 斉田伊三郎”が制作した作品と同時に、初代 橋田与三郎の作品も掲載されています。これは二人が別人であり、初代 与三郎が道開の娘婿であったことから、初代 与三郎が“道開堂”の号または窯元を名乗ったと考えられます

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